『 中国の食糧事情 』 |
次に、中国の食糧事情を見ていきます。 中国の資料としては、「中國統計年鑑」が参考となりますが、 時系列データでは、FAOの資料、国連の資料が有効です。 最近の中国50年間の動きを見ていく上で、幾つかの節目があります。 その節目をはさんで、四つの期間を想定することが出来ます。 第一期 = 文化大革命 (1965年) ~ 改革開放 (1978年) 第二期 = 改革開放 (1978年) ~ 南巡講話 (1992年) 第三期 = 南巡講話 (1992年) ~ 三農問題解決着手(2003年) 第四期 = 三農問題解決着手(2003年) ~ 至る現在 (2016年) この時代を過ごされた方々には、ご自身のライフヒストリーと重ね合わせて、 感慨を持たれることと思います。 中国の人口は、この50年間(第一期~第四期通期)に、7億人から14億人へとほぼ倍増しています。 更に、2015年の生産量ランク上位12品目の内で、一人当たり生産量を比較すると、 8倍台が、キュウリ・生鮮野菜:6倍台が、豚肉・メロン:5倍台が、トマト: 4倍台が、とうもろこし・キャベツ:じゃがいもが3.1倍:砂糖キビが2.6倍: 小麦が1.8倍、米が1.2倍と増加、さつまいもだけが6割減です。 人口が二倍となり、一人当たりの生産量が大幅に増え、しかも、その内容が、米、小麦以外に 広がっていることがわかります。ここからも、当然、食生活の変化が読み取れます。 農産物作付面積の割合でも、第二期末頃(1995年)~現在(2016年)に減少している小麦、米に対して、 とうもろこし、蔬菜・瓜類は大幅に増加しています。 なかでも、トウモロコシの生産量は、第一期末(1978年)~第二期末頃(1995年)に2倍、 第二期末頃(1995年)~現在(2016年)に2倍に増加しています。 この増加の理由は、家畜の飼料としての増加であり、その背景には食肉需要の急増があります。 このことは、豚肉の生産量/とうもろこしの生産量(比率)の推移からも想定されます。 第一期には0.20以下が多いのですが、第三期には0.30以上となります。 ということは、とうもろこしの用途の内で、食用が減り、豚などの飼料となるものが増えた、と考えられます。 さつまいもの生産量減少も、食生活の変化の現れでしょうか。 FAOの統計資料で、2016年ベースの生産量ランキング・ベスト20があります。 50年の間にランクインしたのは、りんご、牛乳、ナス、鶏卵、ホウレンソウ、ニンニク、カブです。 とうもろこしの生産量ランクは、永年の三位から、2013年に一位となりました。 他方、ランクアウトしたのは、高黍、黍、大豆などです。国産豚肉も短期的にはランクアウトしています。 これらから、食生活の都会化が進んでいるように見えます。 都市人口と農村人口の比較ですが、2011年に至り、都市人口が農村人口を上回りました。 都市に住む人達が、皆、食生活の都市化の恩恵を受けているか、となると、違います。 現代の中国が抱える最大の問題である「三農問題」の帰結として、若者の農村から都市への出稼ぎが相次ぎ、 農村が空洞化、かといって、都会にも仕事は足らず、農民工としてかつかつの生活をせざるを得ない、という 状況が続いています。 もちろん、中国政府のテコ入れによって、「三農問題」も改善の方向にはあります。 現に、農作物の耕作面積は、2003年を底に増加していますし、整備水源確保率も向上しています。 栄養不足人口、必要カロリー平均不足量は減少、動物由来蛋白質一人一日当たり摂取グラムは増加しています。 第二期末頃(1996年)から現在(2016年)までの生産量比較では、一人当たりの年間肉類生産量は、 38キロから62キロに増加しています。 また、この間の全体生産量の倍率は、肉全体で1.9倍、牛乳で5.7倍、蜂蜜で2.6倍です。 もう一つの動物性蛋白質の水産品について見てみます。 一人当たりの年間水産品産量は、第一期末(1978年)の4.8キロから、第二期末頃(1995年)に20.8キロ、 現在(2016年)には49.9キロとなっています。 総産量では、第一期末(1978年)~ 第二期末頃(1995年)に、5.4倍、第二期末頃(1995年)~ 現在(2016年)に 2.7倍、第一期末(1978年)~現在(2016年)で14.8倍となっています。 全体の中で、海水産品は9.7倍となっています。更に、淡水産品は32.2倍となり、その中でも、人口養殖は41.7倍となっています。 中国漁船による魚類の乱獲が問題となっていますが、これらの背景に、魚類需要の大きなうねりが見て取れます。 この点への指摘を和らげるためか、統計資料の中で2015年までは①水産品総産量、②海水産品、③淡水産品の順の記載だったものが、2016年からは①水産品総産量、②淡水産品、③海水産品となっている所に、苦労を感じます。 これら需要の増大への考え方ですが、いたずらに脅威と考えるのではなく、例えば、①日本からの輸出を増やすこと、②生産環境の整備に協力すること、③養殖技術、品種改良の支援をすること、④健康食指向を共に進めることなど、建設的方向で考えていく必要がある、と思います。 |
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