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        04.漢字の成り立ち



第四節:漢字の成り立ち
目次

1.文字とは何か
2.造字の書「六書」
3.造字の原理
4.漢字教育の段階
5.文字に関する議論(意符と音符)
6.文字に関する疑問
7.文字に関する妄想?
8.簡体化の考え方

★参考資料[○○]の部分をクリックして御覧下さい。

1.文字とは何か

漢字に関して、「文字」とは何か?
「文字」とは、「文」と「字」との事です。

「字」とは、「梅=木+毎」「猿=犬+袁」の ように、偏や旁があり、それに別の一字が加わり、 幾つかの構成要素に分ける事が出来ます。

これに対して、「文」とは、「火」「馬」「鳥」のように、 その一字で意味をなし、分割する事は出来ません。

「文」から「字」への移行で、漢字の世界は限りなく 拡がって行きました。

   2.造字の書「六書」

班固(AD32~AD92)の『漢書』に造字の種類として、象形・象事・象意・象声・転注・仮借の 六種がある、と記されています。
「教之六書、謂象形・象事・象意・象聲・轉注・假借、造字之本也」

また、許慎(AD58?~AD147?)が著した、最古の部首別漢字字典である『説文解字』でも、六書の記載があり、 これ以降、六書は、漢字を分類する基準となって、漢字の語源を探索する手段となりました。

1.象形:2.指事:3.会意:4.形声:5.転注:6.仮借の六書。

このうちで、1~4が、文字を構成する造字の原理です。

6の仮借は、音の繋がりで、既にある文字を転用する原理です。

5の転注には、諸説がありますが、意味の繋がりで既にある文字を転用する原理とも言われています。

象形文字に関しては、以下のサイトをご参照下さい。

[ 象形文字一覧 ]

仮借文字の例に、新聞記事事例、中国投資先の国名リストをご覧下さい。

[ 新聞記事事例:その1 ]フレーム右サイドノブを上下願います。)



[ 新聞記事事例:その2 ]フレーム右サイドノブを上下願います。)



 

[ 中国投資先国名リスト ]右サイドノブを上下願います。)



3.造字の原理

a. 象形文字とは、日・月・木・耳などのように、事物の形を描いて簡略化した文字です。

b. 指事文字とは、上・下・ 本・末などのように、絵としては描きにくい一般的な事態を、抽象的な約束や、印であらわした文字です。

c. 会意文字とは、武(戈+止)や信(人+言)などのように、象形文字や指事文字を組み合わせて、さらに複雑な意味を表そうとした文字です。

d.形声文字とは、「シ(さんずい)+音符 工」→江や、「シ(さんずい)+音符 青」→清のように、文字の片側の類型的な意味を表す意符(シ=水)と音を表す音符(コウ・セイ)とを組み合わせて造った文字とされています。

ただ、後者の「青」を例にとると、この音符成立以前からある音(青島のqing1に相当する上古音)自体に「澄んだ」という意味がある、と言われており、従来「形声文字」とされてきたものの殆どが、会意形声文字とされています。漢字の中で、この形声文字が9割を占めると言われています。

このように、文字を組み合わせる形声文字で、新たな事象を表現することで、漢字は、その数を増していき、そのお蔭で大雑把ではなく微妙な表現が可能となり、言葉が豊かになる、 という面があります。


4.漢字教育の段階

漢字教育の面では、教育漢字(小学校必修漢字)でも、低学年では象形文字の「文」を多く学び、 高学年になるにつれて、漢字の幅を拡げていきます。

[ 教育漢字での六書 ]



1006字の内訳は、別表「小学校漢字六書分類表」の通りです。

[ 「小学校漢字六書分類表」  ]

5.文字に関する議論(意符と音符)

漢字の大半を占める形声文字の構成要素は、意味を表わす「意符」と、発音を表わす「音符(または声符)です。

先程の「清」の例のように、字の左側に意符、右側に音符がある典型例で、「説文解字」などの字書では、字義を左側の偏に求めていました。

これに対して、北宋の学者:王聖美は、「左文」の偏を「類」とし、旁の「右文」=音符に字義を求め、以降、その学説は「右文説」と呼ばれるようになりました。

北宋の政治家:王安石も右文説をとっていましたが、彼をからかった文豪:蘇東坡の逸話が残っています。蘇東坡は言いました。

世傳 東坡 問 荊公「何以謂之『波』」
曰「水之皮」
坡曰「然則『滑』者,水之骨也」

蘇東坡が王安石に、「『波』はなぜこの字形をしているのか」と問うた。
王安石は、「水の(表面である)皮である」と答えた。
蘇東坡は「では『滑』は水の骨と言うことか」と言った。
(但し、後の研究で「骨」は関節を表し、自由に動くことを意味しているとされるので、右文説的としても矛盾はありません。)

学界第一人者の藤堂明保先生は、右文説から発想を得て、音声に共通の語源を求める単語家族説を構築しているそうです。

右文説についてご興味がある方は、以下のサイトをご覧下さい。

[ 漢字音符とは何か ~右文説を超えて~ ]

6.文字に関する疑問

形声文字に音符があることは分かりました。
でも、「火」「馬」「鳥」のように、その一字で意味をなし、分割出来ない「文」の音声は、どのように決められたのか?

文字を持たない民族にも、言葉はあり、仲間内での会話はあります。
また、文字ではないにせよ、象形を記録していることもあります。その象形を、仲間内でどう呼ぶか?

例えば、鳥偏の漢字の音符例は、以下の通りで、「九:区:甲:我:卑:亜」など、鳥の鳴き声と思われるものもあります。

鳩(クー):鴎(オー):鴨(オー):鵞(ガー):鵯(ヒー):鵶=烏(アー)

[ 説文解字での「鳥部」の記載:抜粋 ]フレーム右サイドノブを上下願います。)



私達でも、「ガチャガチャ」の例、オノマトペの例もあります。
世界共通の美味しいを意味する赤ちゃん言葉「Yummy」もあります。
同じく、犬をワンワン、猫をニャンニャンなどと呼びますね。
「音」が「もの」を聯想させ、その「音」が「もの」を表わす文字となる、と言えるでしょうか?

7.文字に関する妄想?

象形文字に関して、疑問があります。
殆どの書物に、象形文字の「魚」の「灬」、「鳥」の「灬」の部分は、 それぞれ、「魚」の尾ヒレ、「鳥」の足を表わしている、と書いてあります。

先日、バス停でバスを待つ間に、「魚民」の看板を見つけました。
「魚」は囲炉裏端で焼けて、美味しそうな匂いが漂って来る気がします。

「熊」という字は、動物の肉を火で焼いている象形文字、とありました。
人間にとって、「食」=「生きること」は最重要課題です。
「魚」にせよ「鳥」にせよ、衛生上、賞味上、焼いて食べることが、極めて重要だった、と思われます。

「尾ヒレ」「足」説は、極めて順当で、学者的、客観的です。でも、それが本当か?と疑問を感じます。

「灬」は、「熱」「烈」的に、火、炎ではなかったか?
異体字として、そのように見る説もあります。
「島」も、山にトリが留まっている象形とされていますし、「梟」も、木に止まったトリを表わすもの、と言われています。

これは、あくまで妄想ですが、象形文字の理解には、それぞれの考え方、意見があります。

碩学の白川静先生、藤堂明保先生のお二人も、意見を異にされることが多いです。
このように、文字の世界は、深淵な世界です。

[ 象形文字:魚:鳥 ]フレーム右サイドノブを上下願います。)



8.簡体化の考え方

次に見ていく繁体字の簡体化も、今までの漢字の成り立ちを踏まえた対応が取られています。

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[ 0. 教育漢字と簡体字    ]
[ 1. はじめに         ]
[ 2.中国の文字        ]
[ 3.対象とする漢字      ]
[ 4.漢字の成り立ち      ]
[ 5.簡体字成立の経緯     ]
[ 6.簡体化の種類       ]
[ 7.憶えたい簡体字      ]
[ 8.文字の将来        ]
[ 9.資料編          ]
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