『 文章表現 』 |
04.文章表現 「荘子」の文章表現を見て感じることが五点有ります。 1.中国語の表現が簡にして要であること。 2.自らが語ることなく、問答をさせ、読者に聞かせること。 3.作り話、例え話が多いこと(寓言)。 4.有名人(または、らしい架空の人物)に語らせること(重言)。 5.対話の場で口をついて出た臨機応変な言葉が多いこと(巵言)。 ★まず、中国語(漢文)と日本語(読み下し文)と英語(解説文)と の違いを見ていきたい、と思います。 ★このように中国語の文章は、簡にして要、という印象があります。 その理由として、中国語には、時制が有りません。 「食べた。」「食べている。」「食べる。」のように、動詞の語尾を 変化させることはありません。その代わり、アスペクト(相)という 文法形式を取って、動詞が表す出来事の完成度の違いを記述します。 動詞は変化せず、副詞、助詞が付加されます。 例えば、昨天(昨日)、明天(明日)などの時間の副詞があります。 我 昨天 去 學校。 (私は昨日学校へ行った。) 我 明天 去 學校。 (私は明日学校へ行く。) また「了」「矣」「已」「过」などの副詞、助詞が使われます。 表意文字、表音文字の相違も大きく、中国語は簡潔は文章表現です。 フレーム右サイドノブで画面をスクロール願います。★また問答形式が駆使されています。 フレーム右サイドノブで、画面をスクロール願います。☆ 例えば、中国伝説時代の聖天子堯と隠者、許由との問答があります。 堯は、天子の位を許由に譲ろうと申し出ますが、許由は自らの山林 生活で自足していると辞退します。 更に、肩吾と連叔、二人の有道者の問答で、藐姑射(はこや)の 山の「神人」のことが話されます。 「之人也之德也將旁礴萬物以為一」 之の人(神人)や、之の徳や、将(まさ)に万物を旁(あまね)く 礴(おお)いて以て一と為(な)さんとす。つまり、この「神人」 は、万物を遍く包み覆う究極的な「一」の世界に立ち、無為自然の 「徳」により一切存在を感化していく、という「荘子」の思想です。 ★荘周自身語らず、言い足りなさを後講釈しない。問答する二人と、 それを客観的に見る読者の三者がいるが、何を感じるのかは読者に 玉投げされ、読者が立ち止まって意味を考えているうちに、荘周は 遙か先に去っている。そんな所に荘周の編集術が冴え渡っています。 ★また、荘周の文章表現には特徴があり、本人がこう言っています。 「寓言十九、重言十七、卮言日出、和以天倪。」(雑篇「寓言) つまり、「私の言葉の九割は寓言(ぐうげん=作り話:例え話)で、 重言(ちょうげん=有名人の言葉)が七割、卮言(しげん=杯の上の 言葉=アドリブ=そのときの便宜に従う臨機応変な言葉)は、無心 のうちに日々こぼれ出て天の有様と調和する。」、と言っています。 ☆ ★まず、なんと言っても、寓言が多用されています。 大鵬の逍遙を仰ぎ見つつ、地上の蜩(ひぐらし)、学鳩(こばと) は、「何の必要があって、九萬里にも高く飛んで南に行くのか?」 と、嘯きます。でもこれら、又何をか知らんや!小さき知は大いな る知に及ばず、小(みじか)き年(よわい)は大いなる年に及ばず。 これら偉大なものと卑小なものの対比は人間界に置き換えること が出来る、として、荘子は、世俗世界に安住する人、世俗を冷笑し 眺める人、更には、世俗を超越して眺める人、また、最後に何もの にも依存しない究極的超越者たる至人・神人・聖人・真人とがあり、 これこそが逍遙遊の実践者として有るべき姿である、としています。 ★次に、重言ですが、この鵬鯤の話が出鱈目ではない証拠に、この ことが、殷の湯王と賢臣の棘との問答で語られた、と記しています。 先にお話した、堯と許由の問答、肩吾と連叔の問答も重言です。 ★最後は卮言で、「卮」とは杯のことです。荘子には、荘周と友人の 恵施との問答が数多く記されています。恵施の荘周に対する批判は、 荘周の思想が超世俗的に過ぎ、現実に役立たないこと、でした。 これに対して荘周は、「無用の用」と答えます。これこそ卮言です。 ☆ 恵施は、魏王から大きな瓢簞の種を貰ったが、実っても、ボトルに するは大きく重すぎ、割って柄杓にするには、底が平らで使えない、 と愚痴ります。これに対して荘周は、大瓢簞を並べ繋いで浮き袋と し、その上に乗って海を渡れるのに、と言います。恵施は、曲がり くねった大樹は、箸にも、棒にも掛からず、建材にも使えない、と 愚痴ります。これに対して、荘周は、大樹は切り倒されることなく、 静かな木陰をつくり、人々に憩いの場を与えてくれる、と言います。 世俗的常識に囚われて「無用」と思えるものも、一段上の超世俗的 視点で考えれば、真に有「用」なものとなり得る、という考えです。 ★[○○]の部分をクリックし、次の画面にお進み下さい。 [5.内篇] [0.「荘子に学ぶ」冒頭画面] | ||