23.終りに  


23.終わりに

そろそろ、締めに入ります。

ベトナムに行く以前に、初めて憶えた挨拶が、「Xin chào」でした。
この言葉を漢字で書くと、 どうなるのか、が疑問でした。
そこで、日本でも、ベトナムでも、ベトナム、中国の方、に質問してみましたが、会った方は誰も知りませんでした。
つい最近に、ネットで調べていて、やっと分かり、謎が解けました。

日本製漢字である国字研究の第一人者で、常用漢字の選定・改定作業にも携わっている、早稲田大学の笹原宏之教授のサイトに、その記載がありました。
ベトナムの学生に教えに行った時の話しです。

「最初だけでも現地のことばで挨拶をしよう。
声調に気をつけて、「シンチャオ」と、20年以上前に習ったベトナム語を使って挨拶をしてみた。
最初のxin は、学生時代には「請」だと習った。
日本でも「安普請」などではシンと読みはするが、中古漢語などと比すと声調や韻尾のgなどが合わないなと思っていた。
ベトナムには古音や訛音もあるので、語源は必ずしも明確になっていないようだが、この語には「吀」というチュー・ノムが使われてきた。
二2字目の「嘲」は、嘲る・嘲笑という意味ではなくて、チュー・ノムでは仮借ないし新規の形声文字として、あいさつ語を表記する。
先の挨拶を、チュー・ノムで書いてみると、「吀嘲」というようになる。
中国の人に見せても、何のことかきちんとは分からないはずだ。・・・」

チュー・ノムなら、チュー・ノム辞典ならともかく、漢越辞典でもわからず、また、中国の方に 見せてもわからないはずです。
また、ベトナムの人口構成も、50年前の日本と同様に、若者が多く、もはや、漢字やチュー・ノムは馴染みのない過去のものとなっているのかも知れません。

ちなみに、「Xin chào」の「吀嘲」に、漢字での意味がないかを調べて見ました。

「吀嘲」=「吀」+「嘲」で、「吀」とは、「卽楚姓也」(康熙字典)とありました。
ベトナム語の「Xin 」の意味は、「どうぞ」という丁寧語だそうで、漢字の意味とはしっくりしません。

しかし、嘲る(あざける)ではない意味の「嘲」に関しては、「林鳥朝嘲」という面白い記載がありました。
画面のような記載です。

「嘲」とは、まさに、朝の鳥の囀りなのです。
ベトナムの街で、朝、店の軒先に鳥篭を下げて、その下の椅子に腰かけて、鳥の声を聞いている人達をよく見かけました。
鳥を愛する数多くの人達が、小鳥のように爽やかに、口々に挨拶を交わし合う朝の一時。
挨拶に、「嘲」の文字を使うのに、納得が行きました。

さて、勉強をして分かったのですが、発声、文字からなる言葉の世界は、大変ディープで興味が尽きない世界、知の魔界、密林、迷宮でした。
果たして、当初の目的地に辿り着けたのかどうか、心配ですが、とりあえず、お話しを終わらせて頂きます。

永らくのご清聴、有難うございました。

★(231こんにちはの画面表示)
★(232チュー・ノムこんにちはの画面表示)
★(233吀嘲(漢字の意味の画面表示)
★(234感恩の画面表示)
★(235ご清聴の画面表示)

[ 画面を左クリックされると、画面が切り替わります。]


inserted by FC2 system
「ヴェトナム語と中国語」資料室 ]

[ 「ヴェトナム語と中国語」冒頭画面]


inserted by FC2 system