『 新型コロナの変異型について 』        

新型コロナの変異型とは、タンパク質の構成要素アミノ酸が従来型から変異しているものです。コロナ表面のスパイクタンパク質にあるアミノ残基の一部が、宿主の受容体に合致するように変異しています。RNAという匠に伝えられるアミノ残基の設計図となるのが、遺伝子情報が書き込まれた設計図面DNAであり、名探偵コナンに読み解かれた暗号「コドン」なのです。その暗号とは? ・・・

 
01.新型コロナの変異型とは?

新型コロナの変異型とは、アミノ酸残基(蛋白質分子上で、それを構成しているアミノ酸の1単位に当たる部分)が本来の姿から変異しているものです。

ウィルス表面の「スパイクタンパク質」には以下のように、約1200個のアミノ酸残基が直線的につながってできています。



各アミノ酸の位置と種類を示すためにN501のような標記をしています。

つまり、N501という野生型(変異していない元の)ウイルスの標記では、501番目のアミノ酸がアスパラギン(N)であることを意味しています。

他方、N501Yは、この501番目がチロシン(Y)というアミノ酸に変わった(変異した)ことを意味しています。

同様に、E484Kは野生型ではグルタミン酸(E)であった484番目のアミノ酸がリシン(K)になった変異を示しています。

N501Y
N → Y アスパラギン(N)  →  チロシン(Y)

E484K
E → K グルタミン酸(E)   →  リシン(K)

K417N
K → N リシン(K)       →   アスパラギン(N)

D614G
D → G アスパラギン酸(D)   →   グリシン(G)

現在、変異型ウィルスのイギリス株、南アフリカ株、ブラジル株が、従来型に取って替わろうとしています。

イギリス株は、N501Yの変異種ですが、南アフリカ株、ブラジル株には、N501Y、E484K双方の変異があります。

感染しやすさ、重症化のリスク、ワクチンの効果など、変異型への不安があります。


下記URLをクリック頂くと、新型ウィルス変異型の変異部、ウィルス侵入、ウィルスの動きがご覧になれます。

[ COVID19-01:4秒:ウィルスの変異部 ] [ COVID19-02:16秒:ウィルス侵入 ] [ COVID19-03:18秒:百万分の5秒:左上の異物のご注目 ]

02.アミノ酸とDNAコード

★ 画面右のスライダーを上下させてご覧下さい。

アミノ酸22種類(アルファベット26文字からBJXZを除いたもの)と相当するDNAコードがご覧になれます。



03.DNA → RNA → タンパク質の過程

★ 画面右のスライダーを上下させてご覧下さい。

DNAとはデオキシリボ核酸の略称です。デオキシ=酸素基を取ったの意味+リボ+核=Nuclear+酸=acidです。

遺伝情報が保存されるDNAは、糖とリン酸基が作る骨格の上に、塩基が挟まれた二重鎖となっています。 DNAの四つの塩基とその構造式は次の通りです。

構造式が六角形と五角形で出来ているプリン:アデニン(A)、グアニン(G)& 構造式が六角形で出来ているピリミジン:シトシン(C)、チミン(T)

二重鎖となるのは、六角形のチミン(T)と六角形&五角形のアデニン(A)、 同じくシトシン(C)とグアニン(G)が水素結合するためです。

RNAとはリボ核酸の略称です。デオキシと異なり、水酸基が加水分解を受け、DNAよりも反応性が高く、熱力学的に不安定である、とされています。

RNAの四つの塩基は、DNAと同じくアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、 そしてチミン(T)から変じたウラシル(U)です。

塩基は、骨格の皿に上に乗った状態で伝えられます。

遺伝情報は、①DNA内で複製され、②DNAからRNAに転写され、③RNAからタンパク質に翻訳されます。



04.新型ウィルスのゲノムサイズは、29903

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生き物により、DNAの数は異なります。最少のものは、246、最多のものは6700億、ヒトは30億です。

コウモリ由来ウィルスは、29802、サーズウィルスは、29751です。



5.DNA暗号コード「コドン」

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コロナウィルスのDNAを例に取ると、29903個のゲノムのうちで、アミノ酸作成の設計図面となる情報が示されている「エクソン」部分と、その他の「イントロン」部分から構成されています。

アミノ酸の情報が始まる、という「翻訳開始コドン=agt」から、「翻訳終了コドン=taa、tag、tga」の間にある部分のうちで、「イントロン」部分を除いた部分にアミノ酸情報が秘められています。

これが表わすアミノ酸の構造式は、DNAの塩基の構造式とは関連がありません。 「コドン」のアルファベットは、あくまで三文字の暗号の構成要素です。

生物には、原核細胞を持つ原核生物と、真核細胞を持つ真核生物とがいます。違いは、細胞のなかの「核」有無です。

原核生物の例はバクテリアで、そのDNAは小さく、短く、細胞のなかで浮遊しています。 原核細胞では、DNAからRNAに転写されて以降のプロセスは、比較的単純です。最少246のゲノムには、翻訳開始、終了コドン、イントロンもありません。

これに対し、真核細胞では複雑です。DNAは、細胞内の「核」に包まれて、ミトコンドリアなどとともに細胞内にいます。 またRNAに成熟するまで、多くのプロセスが必要です。

用途が未だ不明な「イントロン」部分が数多く挿入され、「エクソン」部分が隠されているDNA、このことを見破った名探偵コナン。研究者の素晴らしさを痛感するとともに、現在のプログラムにも、「イントロン」部分挿入が盛んに行われています。



06.新型コロナの変異型発生の原因

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新型コロナの変異型は、約1200あるアミノ酸残基の一つが置き換わったことにあります。

そのような置換が起きた原因は、29903個あるゲノムの一つの塩基が、何らかの理由で置き換わったことによるものなのです。



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[ 生物と遺伝子:構造生物学者の胡桃坂仁志 ]

[ DNAとゲノム:構造生物学者の胡桃坂仁志 ]

[ セントラルドグマ:構造生物学者の胡桃坂仁志 ]

[ 遺伝子の発現と生命現象:構造生物学者の胡桃坂仁志 ]



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